夫が560万円の借金をしていました。
借金の原因はギャンブルです。
夫の場合、競艇です。
法テラスを通して弁護士事務所に行き、個人再生の準備を始めました。
借金返済のために用意したお金、約160万円が口座から消えました。
夫に電話をかけ、記帳に行ったことを話すと、すぐに電話を切られてしまいました。
以降、着信拒否、ラインは既読が付かなくなり、ブロックをされているようでした。
夫から1通のラインが届きました。
いろいろ書いてありましたが、要約すると、『今までありがとう。探さないでください。』
翌朝になっても帰ってこなかったので、警察署で行方不明者届を出し、捜索してくれることになりました。
私は夫を探すために、夫の職場へと向かいました。
土曜日でしたが、午前中は休日出勤をしている人がいるはずです。
職場の敷地内に入っていく1台の車を見かけ、追いかけました。
建物の外にいる若い男性を見かけました。声をかけるのを一瞬戸惑いましたが、戸惑っている場合ではないと思い、声をかけました。
若い男性は、敷地内に入ってきた知らない人に、いきなり声をかけられ、驚いている様子でした。
私は、夫が昨日から帰らず、連絡がつかないから電話をしてみてほしい、とお願いをしました。
彼は夫の連絡先は知らないと言いました。
若い男性は、経理担当の事務員さんに頼んで、電話をしてもらいましょうか。
と提案してくれました。
事務室に行くと、事務員さんは帰った後でした。
若い男性は、連絡先を知っている人を連れてくると言って、建物の2階に上がっていきました。
連れてきたのは夫より少し年上に見える男性でした。
その男性に事情を話し、夫に電話をしてもらえることになりました。
私が考えた作戦は、
私が職場に来ていることは言わず、急用だから職場に来てほしいと、呼び出してもらう、ということでした。
夫が電話に出たら、です・・・。
夫は無事であれば、
おそらく職場の人からの電話なら、取るだろうと思いました。
夫より少し年上に見える男性は、自分の携帯から夫に電話をかけてくれました。
コール音が鳴っているようで、
「かかってますよ。」
と、男性が言いました。
私や、親族が電話をした時に流れる、
『おかけになった電話を、お呼びしましたが、お出になりません。』
とは違うようです・・・。
着信拒否をしていないのですね。
「おつかれさん。今どこにいるんだよ。」
男性が話し始めました。
夫が電話に出たことが分かり、私の中で力が抜けるような安堵感が広がりました。
男性は淡々とした口調で、夫に、急用があるから職場に来るように、と、話してくれました。
・・・が、
どうやらすんなりと話は通っていないようで、
何度か言葉を交わすうちに、
「嫁さんに心配をかけたらダメだろう!」
という話になっていました。
「あ、切られました。」
男性はそういって、受話器を耳元から離すと、私の方を見ました。
「普段、職場に呼び出したりとかないもので・・・、警戒されたようです。」
「大丈夫です。ありがとうございます。」
夫が生きていることはわかりました。
何をしているのか、どこにいるのか、どうなっているのかはわかりませんでしたが・・・。
とりあえず夫が電話に出られる状況であることが分かっただけでも大収穫でした。
私は電話をかけてくれた男性と連絡先を交換し、もし何かあったら連絡をしてほしいと話をしました。
男性は協力してくれるとのことでした。
この頃の夫は、職場でトラブルが多く、夫を良く思っていない人が多かったのですが、私がたまたま職場であった2人の男性は、数少ないトラブルがない相手でした。
・・・運が良かったです。
この二人の男性は、後々も、職場で夫に寄り添うような姿勢を示してくれていました。
夫を職場に呼び出す作戦は失敗しました。
私は子供を連れて家に帰りました。
私は家に帰ってから、夫との共通の知り合いに連絡をして、電話をしてみてほしいと頼んだりしましたが、電話がつながったのは、私が押しかけて頼んだ職場の男性からの電話のみでした。
夫が行方不明になったなど、あまり人に話したい話ではありませんでしたが、
自分だけの力で、どうにもならない以上、人を頼るしかありませんでした。