弁護士に借金のきっかけや現在の状況をいろいろと聞かれ、夫がしどろもどろに、ぼそぼそと話をしています。
私は口をつぐんだまま、弁護士と夫の会話を聞いていました。
自分のやったことは自分で解決するのが筋だから、私は極力口を挟まないようにしようと思っていました。
声を発することなく、二人の顔を見ることもなく、ただ黙って椅子に座っていました。
実のところ、
積極的に話に参加する気力がなかった・・・、
という部分も、ありました。
私は突然発覚した560万円という夫の多額の借金に、衝撃を受けて、まだそのショックから抜け出せずにいました。
弁護士事務所に相談に来たことは、一つの前進かもしれませんが、
実際のところは、まだ、借金が減ったわけでも、これからどのようにしていくのか決まったわけでもないのです。
まだ、何も変わっていないのです。
目を伏せて静かに座っていた私ですが、頭をあげた瞬間がありました。
「は?」
思わず声をあげました。
夫が弁護士に、私の知らない事実を話し始めたからです。
夫は、私と自分の両親に、
「競艇で賭けたのは最初だけ。」
と言っていました。
だけどそれは、嘘でした。
今思えば、夫の嘘の怒涛のラッシュはすでに始まっていたのです。
私はこれから、嘘をつく時の人の態度、嘘がもたらすありとあらゆる効果を、夫から、とことん学ぶことになるのです・・・。